地球の深度150キロに新たな層「PVG-150 (Positive Velocity Gradient at 150 km)」が検出される プレートテクトニクスの考え方に影響:Newsweek [コジーの今週気になるDXニュースVOL20230215-02]

地球の深さ150キロの領域に溶けた柔らかい岩石の層「PVG-150」が広く分布していることがわかった Vadim Sadovski-shutterstock

<地球の深さ150キロの領域に、溶けた柔らかい岩石の層「PVG-150」が広く分布しており、プレートテクトニクスのモデルに影響を与える可能性があることがわかった……>

テキサス大学オースティン校の研究チームが、地球の深さ150キロの領域に、溶けた柔らかい岩石の層「PVG-150」が広く分布していることを検出した。

こうした性質の層はこれまで一部地域で確認されていたが、例外的な存在だとみなされてきた。今回の研究により、地球の44%以上の広い領域に存在することが判明した。

また、この層の分布域とプレートテクトニクスの発生領域に相関がみられないことから、溶けた岩石の層が従来考えられていたほど大陸の移動に関与していないことも分かってきた。

このため、プレートの移動をモデル化する際、軟岩質の層の存在をほぼ無視できる可能性がある。将来的にプレートテクトニクスのモデルを改善し簡素化できるのではないかと期待されている。

研究はテキサス大学オースティン校ジャクソン地球科学大学院のジュンリン・フア博士(地球科学)らのチームが進めた。研究論文が査読付き学術誌『ネイチャー・ジオサイエンス』に掲載され、2月6日にオンラインで公開されている。

プレートを動かす柔らかい層の一部に、溶融した岩石の層を発見

私たちはふだん、地球の最も外側の部分にあたる地殻の上に暮らしている。その下には、マントル、外核、内核が存在する。

今回新たに発見された溶融層は、地表から約150キロ下に位置する。これは、上部マントルの一部に相当する領域だ。プレートとほぼ同義の硬い「リソスフェア」と呼ばれる領域の下に位置し、柔らかく流動的な「アセノスフェア」の一部を構成している。地殻プレートの移動を引き起こしている部分だ。

これまでにも、アセノスフェアの一部に溶けた岩石の層が存在する例は知られてきたものの、局所的で例外的な事象だと考えていた。今回の研究では、PVG-150と名付けられたこの層が地球の44%以上という広い範囲に広がっていることが明らかになった。

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プレートを動かす柔らかい層の一部に、溶融した岩石の層を発見 (斑点のある赤で描かれている)。Junlin Hua and Karen Fischer

「CTスキャンのように」地震波から内部を解析

地球内部を直接調査することは難しい。そこでフア博士たちのチームは定石に則り、地震波が地球内部を伝わる速度を調べることで内部の層を解析した。フア博士は米CNNに対し、「病院でのCTスキャンにも似ていますね」と例えている。

地震波が溶けた層を通過する際、その速度は緩やかになる。チームは世界各地の地震計から700件以上の観測データを集め、伝播速度の違いを利用してアステノスフェアの世界地図を作成した。

すると、これまで局所的な存在だと考えられていた溶けた岩石の層は、地球の広い地域に分布していることが判明した。

研究を主導したフア博士は、米メディアのヴァイスの取材に対し、「いかに広範囲に及んでいるかということに、少し驚きました」と語っている。

研究チームはこのゾーンを「PVG-150 (Positive Velocity Gradient at 150 km)」と命名した。

溶融しているからアセノスフェアが柔らかいわけではない

チームはさらに、PVG-150と地殻変動との関連を調べた。直感的には、柔らかいPVG-150の層が広がる地域ほど、上部のプレートが活発に移動するようにも思える。

しかし、結果は意外なものだった。分析の結果、PVG-150の存在するエリアとプレートの動きには、相関関係がみられないことが判明した。フア博士はヴァイスに対し、溶融部分は「アセノスフェアの大域的な粘性に実質的な影響を与えていない」との見解を述べている。

では、プレートの移動を促しているとされるアセノスフェアは、なぜ柔らかいのだろうか。フア博士は「比較的軟弱なアステノスフェアの性質は、融解によるものではなく、固い岩石が物理的に変形することで生じている可能性が高いのです」と説明している。

溶融層と直接関係のないところで岩石に高い圧力が加わり、固体のまま物理的に変形しているのだという。

プレートテクトニクスのモデルの改善に貢献

CNNによると、論文の共著者であるブラウン大学のカレン・フィッシャー教授(地質科学)は声明を通じ、「この研究は、アステノスフィア(構造プレートの下にあり、プレートの動きを引き起こしている軟弱なマントルの層)がなぜ柔らかいかという本当の理由を理解するための基礎となります」と述べている。

フィッシャー教授はまた、今回の研究は「つまるところ、温度や圧力の変化など他の要因がアステノスフィアの強度に影響し、プレートテクトニクスが起きうるほど軟弱になるのだという事実を示す証拠となるものです」と語っている。

ヴァイスは今回の研究により、地球の新しい層が明らかになっただけではなく、プレートテクトニクスのモデルに影響を与える可能性があると指摘している。溶けた岩石がプレートの移動に与える影響が非常に限定的であることから、この層の存在を考慮せずにモデルを再構築し単純化できる可能性があるという。

溶解した層がこれまでの常識に反して世界中に分布していることに加え、プレートテクトニクスへの影響を同時に分析した研究となった。https://www.youtube.com/embed/hiIJ1UUETOkScientists Find Strange, Unidentified Structure Hidden Under Earth’s Tectonic Plateshttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/150-6.php

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