東南アジア各地で作られている工業団地への工場誘致には、電力の安定的な供給が必要だ。停電があるようでは安心して工場の操業を行うことはできないから当然だ。日本では電力の安定供給が問題になることはないと思っていたが、日本でも工場誘致の条件に安定的な電力供給が浮上しそうだ。毎年のように、停電の心配をしなければいけない国になった。
今年度の電力需給の逼迫を心配する経済産業省は、新たに「注意報」を設定することを決めた。供給が厳しくなると予想される時に節電を前日から呼びかける。大企業を対象とした電力使用制限令の発動もありえるとされるほど、需給が逼迫する可能性もある。
上昇を続けている電気料金も、これから一段と上昇するだろう。自由化された電力市場で、電気を購入することができない大口需要家も登場し、最終保障供給という安全弁に頼らざるを得ない企業も増え続けている。今年2月には875件だった最終保障供給件数は、5月には20日までの時点で1万3045件に達した。これからさらに増えることになるだろう。
だが、電力需給と価格上昇を心配する経済産業省の足を引っ張る地方自治体が出てきそうだ。東京都が進めている住宅への太陽光パネル設置の義務化政策が導入されれば、電気料金は上昇し、電力供給はさらに不安定化する。おまけに、温暖化対策としては悪手とされる。なにを目的とした政策だろうか。
まだまだ続く厳しい電力供給
今年3月22日東京電力管内は、電力供給が厳しい状況になった(「繰り返される停電危機 日本はどこまで没落するのか」)。これから毎年のように停電危機が発生することになりそうだ。経済産業省は、10年に一度の厳寒になれば来年1月と2月には、厳しい電力供給状況になるとの見通しを発表している。
電気は貯めるとコストがかかるので、需要量のピークに合わせて同時に供給を行う必要がある。つまり、需要量以上に供給力を持つ発電設備が必要だ。
需要量が供給量を上回れば停電する。供給設備容量が需要量を上回る比率は、供給予備率と呼ばれる。例えば、需要量が5000万キロワット(kW)、その時点での設備容量が5150万kWであれば150万kWが余剰の発電設備となり、供給予備率は3%になる。設備があっても燃料がなければ稼働できないので、燃料の確保も重要だが、主要国が脱ロシア産化石燃料を進めれば、日本の発電量の75%を賄う化石燃料の調達に影響を与え、燃料不足で発電量が不足することもありえる。
需要量は予測よりも増えることがあり、また発電設備も故障したりすることがあるので、最低必要な予備率は3%とされている。今年の夏は猛暑であっても予備率3%は確保可能の見通しだが(表)、かなりぎりぎりの地区もある。
加えて設備の不安もある。例えば、漏水により工業用水の取水が減った愛知県の碧南火力発電所の操業が影響を受ければ、供給力が減少する。来年1月と2月は、さらに厳しい状況だ。東電管内はマイナス、つまり供給設備が不足する。中部から九州電力管内も1.3%と厳しい状況が予想されている。
発電設備が減少していることから、これから毎年電力供給は綱渡りが続くことになるだろう。東日本大震災後に停止した原発の再稼働が進まない中で、電力市場の自由化を進め、さらに再生可能エネルギーの導入まで進めた結果が招いた事態だが、制度の手直しが続く中で、当分の間この状況が解消する見込みはない。
短期的な対策として、緊急時に対応可能な発電設備の募集などが行われるが、どの程度供給設備が増えるかは分からない。そこで、経済産業省は需要量を抑制する方法として需給逼迫警報に注意報を追加導入する予定だ。
供給予備率が3%から5%になる見通しとなれば、前日の午後4時に発令される。今年3月21日夜には翌22日の東電管内の予備率が3%以下になる見通しとなり電力逼迫警報が発令されたが、これからは、警報も前日の午後4時にも発令されることになった。そこまでして需要を抑制しなければいけない状態なのが、さらに強硬な手段も検討されている。
経済産業省は、電力需給が逼迫した場合には、電力使用制限令を発令する検討も開始した。特定のエリアの500kW以上の契約の大口需要家を対象に、地域・期間・時間帯を指定した上で使用最大電力(kW)または電気使用量(kWh)を制限する命令だ。予備率が1%を下回る見通しとなった際には、供給力不足による大規模停電を避けるため一部で計画停電を実施することも検討されている。
綱渡りの電力供給に加え、電気料金も上昇を続け、電力供給を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだ。
続きは以下~
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26871

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